2009年1月6日火曜日
反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
貧困はつねに隠されている。その存在は誰にとっても都合が悪いものだからだ。
筆者は日本における貧困層の存在を、豊富な統計的なデータを援用しつつ、自らの支援経験もそれに重ね合わせながら、冷静かつ客観的に明らかにしていく。
こうした説明によってこれまで見えなかった貧困問題が見えるようになった私は、まさに蒙を啓かれる思いがした。
しかしそれだけなら「学者」にもできる。筆者の強みは社会からはじき出された人たちのさまざまな声に、ずっと耳を傾けてきた貴重な体験にこそある。
それゆえ、この本で紹介されている多くの人たちの発言には、筆者の熱い思いが同時に込められることになり、単なる事例紹介を超えたある種の感動を与えるものになっている。
最後の部分で筆者は、すぐにこの本が古びてしまうという代償を払って、反貧困運動の現状分析を試みている。
それは日本の反貧困運動がまだスタートラインにすら達しておらず、いま多くの人たち(つまり、読者たち!)が自分にもできる市民的行動をしなければ、こうした運動自体が雲散霧消してしまうという危機感によるもののように思われる。
強度の大きい橋は、最も弱い部分が補強されているものである。
つまり筆者の言う「強い社会」を目指すのであれば、最も弱い人たちをその周りの人々が支えなければならないはずなのである。
こうしたいわば当たり前の認識が欠如した社会には、たとえそれがどんなに経済的に豊かだと言われていたとしても、個人的には住みたくはない。この本を読んで、私は素直にそう思った。