2009年6月8日月曜日
1Q84 BOOK 1
僕は本作を一流のエンターテイメント作品として素直に、かつ大いに楽しみましたが、同時にこの作品を、昨年亡くなられた村上さん自身のお父様へのレクイエム、そんな風にも読みました。
毎朝食前に戦争で亡くなった人たちのために祈る父親の姿を見て育った村上さんは、近年はそのお父様とは断絶状態にあったと聞きます。「父のまとっていた死の存在感、それは彼が僕に遺してくれた最も重要なものです」(エルサレム賞受賞スピーチより)と語った村上さんの、恐らく最後まで伝えることのできなかった亡き父へのさまざまな想い。僕にはそれが本作に流れる通奏低音のように、そっと聴こえてきました。
そんなことはさておき・・・・・・。村上作品に触れるとき、僕の心は、まるで音楽や絵画を味わう時のような感覚に満たされます。季節が運ぶ風の匂い、遠く過ぎ去った記憶たち、いつかどこかで見た風景、胸の奥を締め付ける懐かしい痛みなどが、時に優しく、時に激しく胸に湧き上がってくるのです。
まだ本作を読んでいない方には、心をまっさらに解放して、「読む」というよりはぜひ「感じる」という姿勢で味わって欲しいのです。そうすればきっと、本作の読了前と読了後で人生の見え方が少しだけ変わってくる、そんな風に僕は思うのです。
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